2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

マザコン定家

異父兄弟である隆信と定家は、共通の母親(というのも変な言い方ですが)である美福門院加賀の死を悼んで歌のやりとりをしています。ここで『隆信集』をみてみましょう。 ははに侍りし人、こころざしはかたみにおろかならずながら、中将なりいへ、さだいへな…

美福門院加賀

歌壇の重鎮藤原俊成をメロメロ(死語)にした女性。あそこまで想われるなんて女冥利に尽きるとわたしも羨ましく思います(笑)。 例の俊成の まれにくる夜半も悲しき松風を絶えずや苔のしたに聞くらむ と定家の たまゆらの露も涙もとどまらずなき人恋ふる宿…

念のため*

他の講義でも申し上げていますが、わたしはこのコメント欄への皆さんの書き込みを以て出席点+平常点にカウントしています。ですので、たとえ毎回出席していたとしても、書き込みがなければそれは欠席と同じ扱いです。無断欠席が多くなれば当然のことながら…

試行錯誤

この辺りの文学事象は俊成・定家そして後鳥羽院というキーパーソンの動きを見ていかないとお話になりません。それぞれが相当に濃いキャラでしかもお互いに密接に絡んでいるので、いつもどうやって話を進めていけばいいのか悩むところ。わたしが授業で扱える…

歌合の変貌

『六百番歌合』、お楽しみいただけたようで何よりです。歌合については萩谷朴編『平安朝歌合大成』や峯岸義秋著『歌合の研究』などの大著がありますので、ご関心のむきはそちらを是非ともお読みいただきたいのですが(あまりにヴォリュームがありすぎて授業…

歌合はバトルだ!

ということで、『六百番歌合』の続きです。今を去ること20年近く前、学部の中世文学演習で一番最初に読んだのがこの『六百番歌合』。発表の準備はそりゃあもう大変でしたが、中世という時代の面白さを教えてくれたのもこの作品なので、少なからぬ思い入れが…

地獄絵

20511130ムトウさんが挙げてくださった『枕草子』の一節。あれが平安時代の貴族の平均的な感覚だったようです。この時代の浄土信仰は、言い方は悪いですが、「お金を出せば極楽へ行ける」的な要素が強かった(宇治平等院などを思い起こしてください)ので、…

『西行絵巻』

20411090スズキさん うっかり忘れていました。申し訳ない!最初にお見せしたサントリー美術館蔵の絵巻では、西行が娘を縁の下に蹴落としているところと、西行が出家の決意を妻に語っているところが同じ場面に描かれていました。これを「異時同図法」と呼びま…

「地獄ゑを見て」

20711123ハシモトさん おっ、なかなか鋭い質問ですね。 1916 なほたのめしめぢがはらのさせもぐさ我がよの中にあらむかぎりは 1917 なにかおもふなにとかなげく世中はただあさがほの花のうへの露 このふた歌は清水観音御歌となんいひつたへたる (『新古今和…

「心」

20511601コウノさん 実は歌論用語において、「心」は普通名詞としての「heart」ではなく、「着想・発想・意味内容」などを広くあらわす言葉。俊成もその意味で「心深し」(着想が良い)と言っているのです。歌論においては「心」と「詞」(言語表現)が対に…

いささか

「情報のカオス」的な様相を呈しつつある今日この頃ですが、時間との闘いなので、これでもイイタイコトの半分ぐらいしかお示ししていません。消化不良を起こさないようにちゃんと整理しておいてくださいね。では、本日もコメントをよろしく。

『千載集』と『御裳濯河歌合』

勅撰集への入集に命を賭ける西行からの猛烈なプッシュに些かムッとしているの俊成の姿。これは『御裳濯河歌合』の序文や判詞をよく読むとよくわかります。『千載集』入集の西行歌についてのエピソードで俊成にがっかりした人もいるようですが(笑)、「幽玄…

追号

「徳」という字の持つ意味については20611081トヨフクさんが書いて下さったとおり(thanks!)。当時の人々の怨霊に対する懼れがいかほどのものであったかがわかるというもの。確かに、勝手に「負け組」にしておいて後になって「本当にあの時は申し訳ありませ…

『詞花集』と西行

『千載集』の説明をしたとき、『詞花集』が同時代の歌人に冷淡だったという話はしたと思いますが、原則として同時代歌人の歌は一人一首しか入集させていないのです。『詞花集』の撰者は六条藤家の藤原顕輔。顕輔と崇徳院のみ複数首入集しているという、実に…

西行、出家の理由

このあたりが気になる人が多いようですが、その真相は今もなお藪の中。よく指摘されるのは 友人の憲康の急死に直面し、この世の無常を感じた 血なまぐさい政争に嫌気が差した 「申すも懼れあるやんごとない女人」との恋愛問題(その相手はかの待賢門院璋子か…

偶像崇拝?

皆さんは、文学史に登場する人々に対してなんとなく美化したイメージを抱いている(いた)のではないでしょうか?俊成に対しても、西行に対しても。まずはそれを崩すところから始めたい(笑)。我々研究者の間では、「研究者として超一流な人が必ずしも人間…

はじめに、人ありき

これが、本講義の基本的なスタンスです。文学史で個々の作品のみを表層的に論ずるというのはあまりに不十分。残っている資料には限りがありますが、そんなフラグメントを寄せ集めて、少しでも、作品を生み出した「人」のリアルな姿に迫りたい。そう思ってい…

俊成やら西行やら

この後もずーっと重要トピックが続きます。連休明けでお疲れなのか、寝ている人もちらほらいましたが、初回の「お約束」をくれぐれもお忘れなきよう。

連休も終わり

これから夏休みまでノンストップですね。お互い(?)しんどいですが、頑張りましょう。 というわけで、本日の講義の感想はこちらにどうぞ。コメント書くのを忘れちゃダメですよ−。

俊成の思惑

皆さんが自分の頭できちんと考え、調べ、そして自分の言葉で説明して下さったこと、とても嬉しく、そして頼もしく思いました。 そう、まずは崇徳院への鎮魂ということが考えられます。20511601コウノさんがお書きになっているように、俊成は崇徳院が下命した…