鶏地獄

かなりの人が『地獄草紙』のあの巨大ニワトリに疑問を持たれたようですね。「どうしてニワトリが?」という質問が多かったのでこちらでお答え。鶏地獄は現世で殺生を犯した人間が堕ちる地獄と考えられており、殺された生き物代表の鶏が人間に復讐をするという形になっています。鶏は身近にいる生き物で、なおかつ卵を取ったり肉を食べるために日常的に絞め殺したりしていますので、人間どもに並々ならぬ恨みを抱いているに違いないという発想でしょう。それに加えて、鶏が鋭い嘴と爪で虫をついばんだりしている様子なども普段見ているわけですから、地獄で巨大な鶏に脳髄をつつかれる、爪で肉を引きちぎられるというイメージはかなりリアリティがあるものであったはずです。
ちなみに、馬や牛の方が迫力があって怖いのでは?というご質問もありましたが、牛・馬に関しては地獄の閻魔王に仕えている牛頭馬頭(ごず・めず)という鬼たちが既にいますので、それとの重複を避けるということもあったのだろうと思います。もちろん、牛頭馬頭も地獄に堕ちた罪人どもに苦しみを与える役回りです。