ヲトメヅカは実在する

これもお配りしたプリントに載っていますが、一応こちらでもご説明。神戸市東部には海岸線に沿って西から西求女塚・処女塚・東求女塚古墳という三つの古墳がそれぞれ2kmの間隔で並んでいます。この三つの古墳は万葉の時代には既に誰の墓だかわからなくなってしまっていたわけですが、この古墳にまつわる恋物語まことしやかに語られるようになりました。すなわち、二人の若者が芦屋に住むひとりの美しき乙女をめぐって争い、乙女は思いあまって生田川に身を投げた。これを知った男二人も後を追って入水するという三角関係の物語。ほぼ等間隔で並ぶ三つの墓を三人の墓と見たてたところからこういった伝説が生まれたのでしょうが、これが後には『大和物語』や能『求塚』、さらには森鴎外の戯曲『生田川』にまで継承されるにいたりました。