歌が先か、絵が先か?

歌絵は和歌の心を絵に描いたものですので、歌が先。これに対して屏風歌は屏風に描かれた情景を和歌に詠むものですから、絵が先。ごく大雑把にいえばそういう関係になるでしょう。歌絵は歌なしでも(たとえば「扇の草子」の扇絵だけで示されても)、その元ネタをわかる人には「あ、あの歌ね」と理解されるでしょうが、屏風歌は本来屏風絵と共に鑑賞されるべきものだったはず。つまり、その屏風を見ることができるごく限られたメンバーのみが、そこに書かれた屏風歌を楽しむことができたということ。それが、後になって、「〜の屏風歌に」といった詞書とともに和歌だけ切り出されて鑑賞されるに至る。絵と切り離された歌は新たな鑑賞者を獲得したというわけです。