後ろ盾を失うこと

親を失った人間がいかに無力かということは、たとえば『伊勢物語』の23段「年ごろ経るほどに、女、親なくたよりなくなるままに、もろともにいふかひなくて あらんやはとて」云々からもわかりますが、定家を何かにつけてバックアップした俊成の姿を思い出せば、親の重要性が改めてわかることでしょう。
父が鴨の正禰宜であったということは、その幼な子が無条件で父の跡を継ぐことを保証するものではなかった。家元継承をめぐるお家騒動のようなイメージで考えるとよいのではないでしょうか。